重症筋無力症について

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病態と診断

重症筋無力症の病態

重症筋無力症は神経細胞や筋肉が壊れるタイプの難病ではなく、筋肉を動かそうとする脳からの命令を伝える神経と、筋肉のつなぎ目に伝達障害が生じ筋力が低下する病気です。

神経の終末部分に電気的な命令が伝えられると、神経終末からは「アセチルコリン,ACh」という物質が「神経筋接合部」に放出されます。筋肉の側にはこの伝達物質を受容し、筋細胞内に神経からの命令を伝える受容体(アセチルコリン受容体, AChR)が多数存在します(図1)

図1-1図1-2

図1-3

(図1)

このアセチルコリン受容体は筋肉を収縮させる為のスイッチのようなもので、重症筋無力症では、この受容体を壊してしまう抗体(抗アセチルコリン受容体抗体,AChR抗体)が自身の体内で作られてしまい、アセチルコリン受容体の数が減少してしまいます(図2)

図2

(図2)

このスイッチには、同じスイッチは繰り返し作用することができないという性質があり、数が何割か減少すると、連続運動や持続運動に障害が生じ、さらに減少すると力が入らなくなってきます。

本来、抗体とは、外から体内に入り込んだウイルスなどの成分から体を守るために、免疫システムが標的を定めて正確につくるものですが、抗アセチルコリン受容体抗体のように、自身の正常な成分を壊してしまうような抗体を自己抗体とよび、自己抗体を作ってしまう誤った免疫反応を、「自己免疫」と言います。

重症筋無力症ではT細胞というリンパ球に依存してB細胞というリンパ球が抗アセチルコリン受容体抗体を作り産生しています。そしてこの系統を病的なレベルまで活性化刺激する抗原提示細胞の存在が重要です。活性化状態が続くと、抗アセチルコリン受容体抗体を作るB細胞がその性質を変化させてしまい薬剤によるコントロールを難しくしてしまうと考えられています(図2)重症筋無力症は抗アセチルコリン受容体抗体という自己抗体を介して起こる自己免疫疾患です。

重症筋無力症の診断に必要な検査

診断のためには、一般的に以下の検査が行われます。

  • 病原性自己抗体測定

重症筋無力症(MG)はアセチルコリン受容体に対する抗体(AChR抗体)を介し神経筋伝達障害を来す自己免疫疾患です。しかし、MG全体の約20%の例ではAChR抗体が検出されません.AChR抗体陰性MGではもう一つの病原性自己抗体として筋特異的受容体型チロシンキナーゼに対する抗体(MuSK抗体)が検出される場合があります.MuSK抗体検査はAChR抗体検査と同様に保険収載され,ルーチンの外注検査となっています.本邦でのMuSK抗体陽性MGの頻度は低くMG全体の3%未満です。AChR抗体,MuSK抗体の両者が陰性のMGはダブルセロネガティブMG(本邦では全MGの約15%強)とよばれます。

「MG患者をMGではないとする誤診」を減らすためのスムーズで感度の高い診断基準が作成されつつあります.現在は、筋力低下が易疲労性を伴っていることに気付き、上述のAChR抗体あるいはMuSK抗体のいずれかが検出されると、即ちMGの診断となります。
この場合、さらに必要となる検査は、胸部のCTあるいはMRI検査です。胸腺というリンパ組織に腫瘍ができていないかを調べるのが主な目的です。

MGでは全体の約20%で胸腺腫を合併し、病態に影響を与えています。胸腺腫関連性MGと呼ばれ、全例、AChR抗体陽性ですが、同時に病態を修飾する(MGの原因ではない)抗横紋筋抗体(titin抗体,ryanodine受容体抗体,Kv1.4抗体など)が検出される場合があります。MGで見られる胸腺異常としては他に過形成胸腺があり、AChR抗体が陽性の若年(およそ40歳以下)の女性例では、少なくありません。過形成胸腺の場合、発症後早期(およそ1年以内)にこれを摘出することによって治療効果が得られると考えられています。

MuSK抗体陽性MGでは胸腺腫は合併しないと考えられています。AChR抗体やMuSK抗体といった病原性自己抗体が検出された場合、診断目的のみであれば、他の検査は必ずしも必要ありません(実際には確認目的で次項の検査も行うことが多いです)。

  • ダブルセロネガティブMGの診断に必要な検査

病原性自己抗体が検出出来ない場合、MGと診断するには神経筋接合部機能障害を示唆する検査所見を得る必要があります。 ①眼瞼の易疲労性試験での眼瞼下垂の増強、 ②アイスパック試験での眼瞼下垂の改善、 ③テンシロン試験での筋力の改善、 ④連続刺激誘発筋電図での漸減現象、 ⑤単線維筋電図でのジッター増大(図3)などがあります。

筋力低下が易疲労性を伴っていることに気付き、①—⑤のいずれかが陽性で、かつ、他の疾患が否定的であれば、MGと診断されます。ただし,①②は眼瞼下垂のある患者でしか実施出来ませんし、③④はMGであっても明解な結果が得られないこともあります。もっとも診断感度の高い⑤は、残念ながら、行える神経内科医が非常に少ないのが現状です。

明解な検査所見が得られず迷う場合,臨床症状からMGが強く疑われ他疾患が否定的であれば,単純血漿交換(抗体を体から取り除く治療)を行い,その治療反応性(抗体を介する自己免疫疾患か否か)をみること(つまり単純血漿交換による診断的治療)が考慮されます。単純血漿交換を何度か行い,その治療反応性を含め状態を1-2ヶ月観察した後,MGか否かを総合的に判断する場合もあります。

一方、例外なく治療は診断の後に行うとする形式を重んじる考えかたもあり得ますが,この方針で①—④が明解ではなくMGか否か迷う場合には単線維筋電図(図3)が必須となります.

図3

(図3)

〔 監修・総合花巻病院神経内科 部長 槍沢公明先生 〕

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